人の感覚というと、五感と言われ、「触覚」、「嗅覚」、「味覚」、「視覚」、そして、補聴器に関する「聴覚」とあります。
それぞれの感覚には刺激の量と密接に関係しているのは、ご存じの通りです。
さて、刺激の量が倍になったとき、または半分になったときに感覚も倍に、あるいは半分に感じるかというとどうでしょうか?
面白いことに、決してそうはなりません。
視覚で言えば、10ワットの電球を倍の20ワットに変えたとして、2倍、明るくなったと感じません。
手のひらにペンを持つと、ペンの重さを感じますが、厚みのある重い辞書をもって、その上にペンをのせても重さが増えたとは感じられません。
さて、聴力はどうでしょうか?
小学生の時に習った理科の授業でもありましたが、音は空気の振動です。
空気の振動ですので、音は音圧といい、単位はパスカルです。台風のときに使う気圧と同じですね。
聴覚の場合、音圧が10倍、100倍になったからと言って100倍も大きくなったと思えません。
では音の大きさをどのようにして、違いが分かるように数値化したのでしょうか?
音の大きさを表す単位は、そう、デシベルです。
普通は、人間の耳に合わせて、音圧レベルで呼んでいます。
「dBSPL(ディービー・エス・ピー・エル)」と言います。サウンドプレッシャーレベルと言います。
物理的に測定した音圧レベルという意味です。
デシベルは、日常の中で、音の大きさ、難聴の程度、音の増幅度、マイクロホンの感度などの表示に使われています。
この「ベル」という単位は、1876年に電話を発明した、グラハム・ベルに由来してつけられたものです。
電話が発達し始めたころに、電話線を遠くに引いていくのに従って音が次第に弱くなるので、その途中の抵抗の増大に応じて電源の電圧を上げていかなければなりませんでした。
技術者たちは、この中で受話器の電力と音として聞こえる音の大きさに一定の法則があることを発見し、対数的に変化することを見つけました。
このときにどれくらい、電力の伝送減衰があるのかを表わすのに用いるようになりました。
その定義式は、
として定義式を作りました。
さらにベルだととても、とても大きな数字になるので、1/10という意味のデシという単位を組み合わせました。
これで、音の強さを10倍、100倍、1000倍とあげるごとに同じ大きさの割合で強く感じることが出来ます。
音圧では、倍率で表示すると桁数が非常に大きくなって分かり難くなってしまう数値を、桁数を抑えて比較的分かり易い数値にするために考えられた表示方法がデシベルというわけです。
この式を用いて、人間の聴覚でも使えることから、聴力の単位として、使用するようになりました。
さて、音圧との違いは、下の通りになります。
デシベルの差 | 音圧(μ㎩) | 倍率 |
0デシベル | 20 | 1倍 |
6デシベル | 40 | 2倍 |
10デシベル | 60 | 3倍 |
20デシベル | 200 | 10倍 |
40デシベル | 2,000 | 100倍 |
60デシベル | 20,000 | 1,000倍 |
80デシベル | 200,000 | 10,000倍 |
100デシベル | 2,000,000 | 100,000倍 |
120デシベル | 20,000,000 | 1,000,000倍 |
40デシベルが小さな会話の音で、60デシベルが普通の会話の大きさ、その差、100倍です。このとおり、音圧で言えば、ものすごい倍率です。
実はデシベルにはいくつかの種類があります。
先ほどの、音圧レベルの「dBSPL」
人の聴力の単位は「dBHL(ディービー・エイチ・エル)」と言います。
聴力の測定などに用いられる場合は「dB HL(ディービー・エイチ・エル)」という単位を使用します。
HLはヒアリング・レベルの略で聴力レベルを意味しています。
この単位は、私たちがどれくらいの大きさで音を聞いているのかを表します。
健康的な標準の聴力を正常値として、どのくらいの低下なのか、判断しています。
まずは、ご自身の聴力をきちんと確認してみることをお勧めいたします。
聴覚とは不思議なもので、音質について、好みというものがあります。
キンキンする高音が苦手な方もいれば、大丈夫な方もいらっしゃいます。
補聴器も同じで、お客様の好みの音質に合わせて、機種によっては細やかな調整が出来ますので、ぜひ、ご相談頂ければ幸いです。