難聴とQOLの関係性
コラム『池田補聴器のこだわり』② で、述べた通り、日本は補聴器後進国だということを認めざるを得ない状況です。
難聴はいわゆる老化を原因とした症状で逆らうことが出来ず、実に60歳を超えた人間の三人に一人は難聴を患っているというデータがあります。
研究の結果では、補聴器は90%から95%の比率で難聴の方にとって有効な手段だと言われており、欧米では80%を超える難聴の方が高い満足度を実感しています。
しかし日本では難聴を患う方の約40%程度しか補聴器を使用していない状況です。
創業55年を超える池田補聴器では毎年多くの新規のお客様にご来店いただき、ご対応を行っていますが、残念ながら100%の難聴でお困りの方に補聴器を販売できているわけではありません。
残念ながら購入に至らなかったお客様に『なぜ補聴器を購入しなかったのか?』というアンケートを実施、集計を行いました。
結果は以下の3点です。
①老人に見られて嫌だ
②高い
③自分は困っていない
老人に見られて嫌だ
⓵老人に見られて嫌だ、という方が多いです。
補聴器をつけていると老人に見られて嫌だという方が多いのですが、実際そうでしょうか?
一緒にいらっしゃるお連れの方が、きこえづらい方に話をする際に一番困ることが大きな声で話さなければいけないことです。
また、きこえづらいご本人も、ご自身の声を確認するために知らず知らずに大きな声になってしまいます。
そのためご自身が認識されている以上に大声での会話を公衆の面前で行い、周りに注目されてしまい、『ご老人』がいるという印象をつけてしまいます。
また多くの方が、補聴器の大きさを気にされています。
もちろん難聴の度合いによっては大きくはなってしまいますが、思ってらっしゃるほど補聴器は目立たない(耳の中に入っていたり、髪の毛でかくれたり)、というよりも、あまりほかの方は注目していないというのが本音です。
実際にすれ違う方の耳を確認されますか?
大体の方が、他人の耳に注目をしていません。
また近年、若い方の間でワイヤレスのヘッドホン・イヤホンが流行しており、耳に何かをつけるという文化が当たり前になってきています。
補聴器自体が超小型の耳の穴に収まってしまうものもありますし、それよりもきこえづらいために大声で会話をする方が注目をされる、ということを見落としている方が多数です。
高い
②『高い』、確かに補聴器は安くはありません。
池田補聴器で一番売れている商品ラインナップは片耳25万円位の商品です。
両耳で50万円位になります。補聴器には『補聴器本体』の価格と『購入後のフォロー・サービス』の価格が含まれています。
大体5年位は皆さん補聴器を使用されています。
その期間のメンテナンス等の費用が含まれています。
使用期間のサービス料金が含まれているので、それを説明するとご理解をいただけるケースが多いです。
ただ池田補聴器のように定期的に店舗にご来店の誘致をしていない販売店の場合、年に1度、または壊れた際にのみ店舗に行かれる場合は、割高かもしれません。
また、近年テレビや新聞などで『集音器』と呼ばれるものをお安く購入される方も多いですが、池田補聴器にご来店いただく方で以前に『集音器』をご購入された方の大半は買わなければ良かったと言われています。
『集音器』は奇跡的に運が良ければ、満足いくこともありますが、個人個人のきこえの状況に合わせることのできない商品ですので、大半の場合が聞こえるように音を上げようとすると、周りの『雑音』も同じように音量を上げてしまいます。ですから結局物理的に、聞きたい音が聞こえない状況は変わらないのです。
『集音器A』でだめなら『集音器B』と何回も買い替え、そもそも補聴器を購入できるくらいのお金を無駄にしてしまったというお客様も何名もいらっしゃいました。
補聴器は使用される方のきこえに合わせて、必要な周波数ごとに音量を上げ下げできることが『集音器』と根本的に違うところです。
またグレードの高いものほどその周波数が細かく上げ下げ出来たり、会話や生活に邪魔な雑音を減らす機能が強かったりします。
見た目は似ているが、対応面では勿論の事、機能面では↑図のように、
補聴器は小さい音から大きな音まで煩くなりづらいように感度調整が出来るが、
集音器では、音の増幅度が一定のため、煩くなりやすい。
また、ネット通販等ではオーダーメイド品はないため、ご自身で装用具合を練習したりする事も考慮しないといけない。
自分は困っていない
③『自分は困っていない』、周りの方は困っています。
一番補聴器販売を行っていて残念なことは、ご家族様が使用すべきお客様をせっかくお連れいただいたのにお役に立てないことです。
①で述べた通り、大声で目立ってしまうことや家族間の会話が困難になること、一緒に暮らしている際にテレビのボリュームが違うなど、生活や人間関係に支障を来してしまうことです。
補聴器販売店では測定をして、聴力に合わせた補聴器をご本人にお試しいただき、その効果が出ているかどうかの確認を行います。
100%ではありませんが、大体の確率できこえの状況は改善され、その場での会話の改善(双方の声が小さくなる)や、ご実家でのテレビの音量の削減等大きな改善が見られたとしても、結論として『自分は困っていない』と言われ、購入を断られることが多々あります。
その際の理由は、①なのか②なのか、はたまた違う理由なのか、お客様の本心は分かりませんが、ご自身は購入を決断するほど困っていないと言われた際のご家族、同伴のお客様の残念そうな表情が居たたまれません。